「大辻清司『具体 1956 - 1957』をめぐって」英訳翻訳出版への助成
2012年3月に東京パブリッシングハウスによって出版されたポートフォリオ「OTSUJI KIYOJI GUTAI PHOTOGRAPH 1956-57」に添付される『大辻清司「具体1956-1957」をめぐって』の英訳出版への助成を実施した。 「具体美術」は、嶋本昭三、山崎つる子、正延正俊、上前智祐、吉原通雄、吉田稔郎、白髪一雄、村上三郎、金山明、田中敦子、元永定正らにより、従来の表現や素材を次々と否定して新しい美術作品を生み出された。活動は展覧会の開催にとどまらず、機関紙「具体」の発行、野外展、舞台での発表やデパートの屋上でのアドバルーン展など、型破りな活動を展開していった。特に初期の実験性は、パフォーマンスアートやハプニング、インスタレーションなど現代美術のさまざまな分野の先駆として認められ、1990年代以降、日本の戦後美術に関する展覧会への各作家の参加や、ヴェネツィア・ビエンナーレでの回顧展ほか、あいついで国内外で展覧されている。その後、フランスの批評家ミシェル・タピエにより「アンフォルメルの日本における一例」として海外へ紹介され、高く評価されるようになった。 写真ポートフォリオ「OTSUJI KIYOJI GUTAI PHOTOGRAPH 1956-57」は、当時『藝術新潮』誌の嘱託カメラマンであった大辻が、1956年、東京の小原会館で開催された「第2回具体美術展」および、1957年、東京の産経ホールで開催された「舞台を使用する具体美術展」を撮影したドキュメント写真をまとめたものである。このポートフォリオを追補するものとして、具体美術の研究家の河崎晃一氏、写真史研究家の大日方欣一氏、写真家の小平雅尋による小論『大辻清司「具体1956-1957」をめぐって』を冊子としてまとめている。JCRIはこの冊子の英訳出版に対して助成を行った。 グッゲンハイム美術館における「具体展」、MOMAでの「Tokyo 1955 – 1970」など海外での日本の戦後美術への関心が高まりつつある中、「大辻清司『具体 1956 – 1957』をめぐって」の英訳出版は日本から「具体美術」活動について発信する機会となった。 この冊子は300部出版され、東京パブリッシングハウスにて販売されている。