川崎市岡本太郎美術館「かたちとシミュレーション 北代省三の写真と実験」展
関連イベント 大日方欣一氏による講演会開催への助成
2013年10月19日から2014年1月13日にかけて川崎市岡本太郎美術館にて「かたちとシミュレーション 北代省三の写真と実験」展が開催された。
北代省三(1921-2001)は、「実験工房」の中核をなした作家の一人で、モービルや絵画、舞台芸術、映像など幅広い分野で活動し、高い評価を受けた。
1953年、写真家の大辻清司との共同作業となる「APN」の制作をきっかけに、写真へと活動の幅を広げていく。当初は写真を用いた実験的な試みを行っていたが、1956年「画家から写真家へ」と宣言後、それまで制作の軸となっていた絵画から写真へと移行する。その後、「グラフィック集団」では商業広告に用いる実験的な写真を発表した。しかし、1970年の日本万国博覧会以降、高度経済成長期における技術の発展の影で環境破壊や過度なエネルギー消費などの諸問題が発生し、それらを生み出していく社会に対し疑問を持ち、商業写真の仕事から離れていく。
そんな中、北代が最終的に行きついたのが自分の手で物を作るという手法であり、それは細部にまでこだわった模型飛行機やハンドランチグライダー、手作りカメラ、凧などの制作につながる。
今回の展覧会では、「実験工房」や「グラフィック集団」から派生した仕事から、産業界や先端技術の現場をとらえた写真、模型飛行機など、多岐にわたる北代省三の作品が展示された。
「実験工房」時代の「APN」から始まり、「樹」、「自動車についての美学」、「グラフィック集団」時代の「『ばっくしーと』のための写真」、『SPACE MODULATOR』の「把手」、その後の「未知のビジョン」シリーズ、模型飛行機に至るまで、北代独自の視点による観察と、さまざまなメディアを用いた表現方法は、北代が一貫して「シミュレーション(実験)」を繰り返した人物であったことを物語っている。
JCRIでは、展覧会期中に開催された大日方欣一氏による二回の講演会に対して助成を行った。
大日方氏は写真史家として活躍している。第一回目の参加者は55名で、展示会場でのギャラリートーク形式の講演会では、写真をめぐる北代省三の活動が時代に沿って概説された。また第二回目は25名が参加し、これまであまり語られることのなかった「グラフィック集団」の活動について研究報告がなされ、計二回の講演会により来場者が作品や作家への理解を深める機会となった。