「トークセッション アーティストとアーカイヴ:《陸と海》(1970)を巡って」への協力
2015年3月7日に慶應義塾大学にて「トークセッション アーティストとアーカイヴ:《陸と海》(1970)を巡って」が開催された。JCRIはこのイベントに協力として参加した。現代美術作家の河口龍夫氏の他、慶應義塾大学アート・センターの渡部葉子氏、横田茂ギャラリーの横田茂の三者が登壇し、《陸と海》、そして「第10回日本国際美術展 Tokyo biennale ’70〈人間と物質〉」(以下「東京ビエンナーレ」)を巡って論じた。
河口龍夫氏は日本を代表する現代美術作家の一人である。1960年代から作品の発表を始め、「関係」をテーマに制作活動を行い、鉄・銅・鉛といった金属、光や熱などのエネルギー、さらには化石や植物の種子など様々な素材を用いながら、物質と物質、あるいは物質と人間との間の目に見えない「関係」を浮かび上がらせようという一貫した姿勢で制作を続けている。
《陸と海》は、1970年に神戸の須磨海岸で撮影した写真作品である。この時に撮影されたのは130点以上、その内の26点が選定され東京ビエンナーレに出品された。今回、その26点以外の写真が発見された背景には横田茂ギャラリーの存在がある。
河口龍夫氏と横田茂ギャラリーの横田の出会いは1975年に遡る。東京の南画廊で河口氏の初の個展が開催された際に、南画廊の志水楠男氏が河口氏と横田を引き合わせた。その後、ギャラリーでは1983年に最初の個展が開催され、以後、計16回の展覧会を開催して
いる。2011年に展覧会をする際に、これまでの仕事を全体としてどう捉えるかということで、1970年代の作品を並べ、リストアップを行った。その時に流木の作品や《陸と海》のスクラップブックが発見された。また、2015年3月よりアメリカのヒューストン美術館で開催された日本の写真の展覧会「For a New World to Come: Experiments in Japanese Art and Photography, 1968–1979」への《陸と海》の出品依頼がきた折に、1970年の東京ビエンナーレに出品した26点以外の写真およそ100点余りが河口氏のアトリエから再発見され
た。東京ビエンナーレに出品された26点は、いわば正装した形で展示された。しかし、その背後に残された作品も大変重要であると考え、横田茂ギャラリーではトークセッション終了後の2015年3月9日から3月20日にかけて、今回、再発見された写真を展示した。